たぬといった。百ガルヴァルは、日本の二四一九貫二〇〇匁で、大した量でないがこの話成った頃の韃靼《タタリア》では、莫大な物だったのだ。そこでシャー、しからば五十ガルヴァルはと問うと、海王それも出来ぬから、自分の后と諸公主《むすめども》を進《まいら》そうと答えた。このシャー女嫌いと見え、しからば二十五ガルヴァルはというと、それだけなら何とか拵《こしら》えて見ますと言って献った、その海王の粮《かて》というは稲で、もとより水に生じ、陸に生きなんだが、この時より内地諸湖の際に植えられたとある。
 秀郷が、竜宮から得た巻絹や俵米は尽きなんだが、一朝|麁忽《そこつ》な扱いしてから出やんだちゅう談に似た事も、諸邦に多い。『五雑俎』十二に、〈巴東寺僧青磁碗を得て、米をその中に投ず、一夕にして満盆皆米なり、投ずるに金銀を以て皆|然《しか》り、これを聚宝※[#「怨」の「心」に代えて「皿」、第3水準1−88−72]《じゅほうわん》という、国朝沈万三富天下に甲たり、人言うその家にかの宝盆ありと〉、これは少し入れると一盃に殖えるので、無尽の米絹とやや趣きが差《ちが》う。欧州には、金を取れども尽きぬ袋の話多く、例せ
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