》ありて上下二片に分れ波動して身を進むる様に恰当《よくあた》り、鯨は古人が大きな海産動物を漠然総称したので、英国ノルウェー北米等の海から稀に獲るネレイス・ヴィレンスちゅう大ゴカイの長《たけ》一フィートより三フィートで脊色深紫で所々|黯青《あんせい》また緑ばかりで光り、脇と腹は肉色であるいは青を帯びたる所がヨンストンのいわゆるその身全く青く脇と腹赤を帯ぶに合いいる、ローマのプリニウス等かかるゴカイを海蜈蚣《スコロベントラ・マリナ》と号《な》づけ、鈎《はり》を呑めばその腸をまるで吐き出し鈎を去って腸を復呑《のみもど》すと書きいるとあって、この鈎一件についても説を述べられ予と論戦に及んだがここに要なければ略す、女文豪コンスタンス・ラッセル夫人よりも書面で教えられたは、哲学者ジョン・ロック一六九六年(わが元禄九)鮭の胃を剖《さ》いて得た海蚣をアイルランドの碩学で英学士会員だったモリノー男に贈り、男これを解剖してロンデレチウスやヨンストンの蜈蚣鯨とやや差《ちが》う由を述べ、ロックの記載とともに同年版行したとあって、熊楠がこの学問上の疑論を提出した功を讃められたが、対手《あいて》が高名の貴婦人だけ
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