到り沢中に放ち草を食わしむ、時に離車種の者竜を捕り食うが一竜女を捕えた、この竜女|布薩法《ふさつほう》を受けたれば殺心なく、鼻に穴開け縄を通して牽《ひ》かれ行く、商人竜女の美貌を見て慈心を起しとあるが、全体竜女は婉妍人間婦女の比にあらず、今もインドで男子をして魂飛び魄散ぜしむるほどの別嬪を竜女と称うる(エントホヴェンの『グジャラット民俗記』一四三頁)くらい故、この商人も慈心も起せばほ[#「ほ」に白丸傍点]の字でもありやしたろう、この商人離車に一牛を遣るからその竜女を放てというも聴かず、因って種々|糶《せ》り上げて八牛で相談調い竜女を放った、商人こんな悪人はまた竜女を取るも知れぬと心配して、その行く方へ随って行くと一《ある》池の辺で竜が人身に変じ商人に活命の報恩にわが宮へ御伴《おとも》しようと言う、商人いわく汝ら竜の性卒暴、瞋恚《しんい》常なし、我を殺すかも知れぬから御伴は真《ま》ッ平《ぴら》と、竜女いわくわが力|能《よ》くかの離車を殺すも我布薩法を受けた故殺さなんだ、いわんや活命の大恩ある人を殺すべきや、少しく待ちたまえといってまず入り去った、この辺竜宮の門あり、二竜を繋《つな》げり、
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