飭《かざ》った門あり、また暫く待って七宝で飾った宮殿を過ぎて極楽ごとき中殿に到る、六十ばかりの人微妙に身を荘《かざ》り出で来り、強いてかの男を微妙《いみじ》き帳床に坐らせ、己れは子あまたある末子なる女童この昼渡り近き池に遊ぶを制すれど聴かず、そのまま遊ばせ人に取られて死ぬべかりしを其《そこ》に来合せ命を助けたもうとこの女子に聞いた嬉しさに謝恩のため迎え申したと言って、何とも知れぬ旨《うま》い物を食わす、さて主人いわく己は竜王なり、今度《このたび》の酬《むくい》に如意の珠を進ぜんと思えど、日本人は心|悪《あ》しくて持ちたまわん事難し、因ってかの箱をというて取り寄せ開くと中に金の餅一つあり厚さ二寸ばかり、それを取り出して中より破って片破《かたわ》れを箱に入れ今一つの片破れを男に与えて、これを一度に仕《つか》わず要に随うて片端より破って仕いたまわば一生涯乏しき事あらじという、男これを懐にして今は返ろうと言うに、前《さき》の女子来て例の門に将《つ》れ出で眠らせて池辺に送り出し重ね重ね礼を述べて消え失せた、家に帰れば暫《しば》しと思う間に数日経ていた、この事を人に語らずこの金の餅の片破れを破れど
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