タ信と蔑む自身も一種の迷信者たるを免れぬ。したがって古来の伝説や俗信には間違いながらもそれぞれ根拠あり、注意して調査すると感興あり利益ある種々の学術材料を見出し得るてふ事を摩訶薩※[#「※」は「つちへん+垂」、52−13]王子虎に血を施した話の序《ついで》に長々しく述べた訳じゃ。
 唐義浄訳『根本説一切有部毘奈耶破僧事《こんぽんせついっさいうぶびなやはそうじ》』巻十五に昔|波羅※斯[#「※」は「やまいだれ+尼」、52−14]《はらなし》城の貧人山林に樵して一|大虫《とら》に逢い大樹に上ると樹上に熊がいたので怕《おそ》れて躊躇《ためら》う。熊愍れみ来ってその人を引き上げ抱いて坐る、大虫熊に向いその人は恩知らずだ、後必ず汝を害せん擲《な》げ落して我に食わせよ食い得ぬ内は去るまじと言う、熊我いかでか我を頼む者を殺すべきとて聴き入れず、熊かの人に向い我汝を抱きて疲れたり暫く睡《やす》む間番せよとて睡《ねむ》る、大虫|樵人《きこり》に向い汝いかにするも樹上に永く住《とどま》り得じその熊を撞《つ》き落せ我|※[#「※」は「くちへん+敢」、53−3]《く》うて去らんと言う、樵夫《きこり》もっともと同
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