sやまうば》を殺し自分耳にその血を塗って後日の証としたのが今に遺《のこ》ったと言う、米国住黒人の談に昔青橿鳥その長子を鷹に攫《つか》み去られ追踪すれど見当らず憊《つか》れて野に臥す。微《かす》かに声するを何事ぞと耳を欹《そばだ》て驍ニ蚋《ぶゆ》が草間を飛び廻って「かの青橿鳥は何を苦にするぞ」と問うに「彼の初生児を鷹に捉られた」と草が対《こた》う、蚋「汝は誰に聞いたか」、草「風に聞いたから本当に風聞ちゅう物だ」、蚋「その鷹はどこにいる」、草「シカモールの古木に巣くいいる」、蚋「なぜ青橿鳥は鷹に復讐せぬじゃろか」、草「彼奴《あいつ》も他諸鳥同様鷹を怖ろしいからだ」、これを聞きいた草間の虫ども、鷹に敵する鳥はない橿鳥とても児で足らぬ時は自分も鷹の餌となるを懼るるんだと言い囃す、青橿鳥これを聞いて無明の業火直上三千丈、たちまち飛んで古木のシカモール樹に至ると鷹すでに橿鳥の児を喫《く》いおわり不在だったが、巣に鷹の児があったのをことごとく殺した、その時親鷹還り来るを見るより青橿鳥騎馬様にその背に乗り夥しく啄《つつ》きまた掻き散らした、傷から出た血が乾いて今まで鷹羽に条《すじ》や斑となって残ったと
前へ 次へ
全132ページ中62ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
南方 熊楠 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング