_ヴェントリー辺昔|嗹人《デーンス》敗死の蹟に彼らの血から生えたという嗹人血《デーンス・ブラッド》なる草あり、某の日に限りこれを折ると血出ると信ぜらる、これは桔梗科のカムバヌラ・グロメラタ(ほたるぶくろの属)の事とも毛莨《きんぽうげ》科のアネモネ・プルサチラ(おきなぐさの属)の事ともいう(同上、頁三一五。一九一〇年十二月十七日『ノーツ・エンド・キーリス』四八八頁)。アルメニアのアララット山の氷雪中に衆紅中の最紅花、茎のみありて葉なきが咲くトルコ人これを七兄弟の血と号《な》づく(マルチネンゴ・ツェザレスコ『民謡研究論《エッセイス・イン・ゼ・スタジー・オヴ・フォーク・ソングス》』五七頁)。わが邦の毒草「しびとばな」も花時葉なく墳墓辺に多くある故|死人花《しびとばな》というて人家に種《う》うるを忌む(『和漢三才図会』九二)というが、この花の色がすこぶる血に似ているのでかく名づけたのかも知れぬ、『説文』に拠ると今から千八百余年前の支那人は茜草を人血の所化《なるところ》と信じた、ドイツ、ハノヴワルの民ヨハネ尊者誕生日(六月二十四日)の朝近所の砂丘に往き学名コックス・ポロニカとて血の滴り様に見ゆる
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