`肉多き果《み》が落ちて虎に中《あた》り潰《つぶ》れ虎を汚して条紋を成したと。『本草』に海中の虎鯊《こさ》能く虎に変ずとある。一八四六年カンニングハム大尉の『印度ラダック通過記』に今日アルモラー城ある地で往古クリアン・チャンド王が狩すると兎一疋林中に逃げ入って虎と化けた。これは無双の吉瑞で他邦人がこの国を兎ほど弱しと侮って伐《う》つと実は虎ほど強いと判る兆《きざし》とあってこの地に都を定めたという。ランドの『安南民俗迷信記』にコンチャニエンとて人に似て美しく年|歴《と》ると虎に化ける猴《さる》ありと。
 『本草綱目』に越地《えつち》深山に治鳥《じちょう》あり、大きさ鳩のごとく青色で樹を穿《うが》って※[#「※」は「あなかんむり+果」、81−5]《す》を作る、大きさ五、六升の器のごとく口径数寸|餝《かざ》るに土堊《どあ》を以てす、赤白|相間《あいまじ》わり状|射候《まと》のごとし。木を伐る者この樹を見ればすなわちこれを避く、これを犯せば能く虎を役して人を害し人の廬舎《ろしゃ》を焼く、白日これを見れば鳥の形なり、夜その鳴くを聞くに鳥の声なり、あるいは人の形と作《な》る、長《たけ》三尺|澗《
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