オたが、少しく追加するとインドのマラワルの俗信に虎の左の肩尖《かたさき》の上に毛生えぬ小点あり、そこの皮また骨を取り置きて嘗《な》め含むと胃熱を治す、また虎肉はインド人が不可療の難病とする痘瘡《とうそう》唯一の妙剤だと(ヴィンツェンツォ・マリア『東方遊記《イルヴィアジオ・オリエンタリ》』)。安南の俗信に虎骨ありて時候に従い場処を変える、この骨をワイと名づく、虎ごとにあるでなく、最も強い虎ばかりにある、これを帯びると弱った人も強く心確かになる、因って争うてこれを求むとあるが(ラント『安南民俗迷信記』)、ワイは支那字|威《ウェイ》で、威骨《ウェイクツ》とて虎の肩に浮き居る小さき骨で佩《おび》れば威を増すとてインドでも貴ぶ(『日本及日本人』新年号(大正三年)二三三頁を見よ)。安南人また信ず、虎鬚有毒ゆえ虎殺せば鬚を焼き失う習いだ。これを灰に焼いて服《の》ますとその人咳を病む、しかし死ぬほどの事なし。もし大毒を調《ととの》えんとなら、虎鬚一本を筍《たけのこ》に刺し置くと鬚が※[#「※」は「むしへん+毛」、76−8]《けむし》に化ける。その毛また糞を灰に焼いて敵に服ませるとたちまち死ぬと。安南人
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