lありて、人の魂をのみ食わんと索《もと》む、また十日代る代る出て金を流し石を鑠《とか》す、魂往かば必ず釈《と》けん、南方には人肉を以て先祖を祭り骨を醢《ししびしお》とし、また九首の雄※[#「※」は「一と儿を上下に組み合わせる+虫」、74−10]《ゆうき》ありて人を呑む、西方には流沙ありて穀物も水もなし、北方には氷雪千里止まる事がならぬ、天に上らんに九関を守る神虎豹あって上らんとする人を害す、また九頭の人あり、豺狼を従え人を淵に投げ込む、下界へ往けば土伯三目虎首、その身牛のごとく好んで人を食う、どっちへ往くも碌《ろく》な事ないから生き復《かえ》り来れとある。一九《いっく》の『安本丹』てふ戯作に幽霊を打ち殺すと死ぬ事がならぬから打ち生かキかも知れぬとある。すでに死んだ者がどんな怪物に逢ったって食い殺さるる気遣いはないようだが、古支那人は近世の南洋人のごとく、怪物に魂を食わるるとその人個人として自存が成らず心身全滅して再生また極楽往きの望み竭《つき》ると懼《おそ》れたのだろ、このところ大いに仏説にどんな大地獄の罪極まる奴も再生の見込みあるとせると違う、サモア島では以前急死人の魂を他の死人の魂
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