易の占いして金取り出だしたること
南方熊楠

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)金《こがね》取り

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)今|審《つまび》らか

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号)
(例)※[#「火+召」、第3水準1−87−38]
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「易の占いして金《こがね》取り出だしたること」と題して『宇治拾遺』に出た話は、旅人が大きな荒れ家に宿を求むると、内には女一人しかないらしく、快くとめてくれた。夜あけて物食いに出掛けると、かの女が君は出で行くわけにゆかぬ、留まれ、と言った。何故と問うと、わが金《こがね》を千両君に貸しあるから返したのち出でゆけ、と言った。旅人の従者どもからかい半分、きっとそうだろうとまぜ返すを、旅人は真面目に止まって占いを立て、かの女を呼び出し、汝の親は易の占いをしたかと尋ねると、何か知らねど今君がしたようなことをした、と答う。そうだろう、さて何ごとで予が千両負いおると言うかと問うに、親が死にざまに多少の物を遺《のこ》し置き、十年後の某
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