て居る「プラグマティズム[#「プラグマティズム」に傍点]」などが其適例である。先頃の「哲學、心理學、科學的方法雜誌」(Journal of Philosophy, Psychology, and Scientific Method)などには種々の「プラグマティスト」の論議を分析して「プラグマティズム」に十三種の別があると説いた論文などが出て居る。自然主義も矢張り新生の主義である。未だ充分に論議の精錬を經て居ない。隨て、等しく自然主義を標榜して居る人々の間に種々の矛盾もあらうし、又た同一の人の論議中にも兩立し難い色々の思想が混在して居るであらう。併し、其處に未だ之から色々に發展して行くべき餘地があるので、其處に生命があると思ふ。併し又た他方より考へて見ると、是れ丈け多樣の思想が同一の旗幟の下に集まるといふにも亦た何等かの因縁があらう。其多數の思想の中には漠然ながらも同一の傾向がありはしないか[#「其多數の思想の中には漠然ながらも同一の傾向がありはしないか」に傍点]。よし一々の人の論議を取て綿密に分析したならば此共通傾向に矛盾する樣なことがあるとするも、其れは其人に此傾向と並行して他の傾向も亦たあるといふことを示すのみで、其人が自然主義の中に籍を置くといふ理由は矢張り此共通傾向をば他の傾向に比較して多量に分有して居るといふ點にあると思ふ。此共通傾向[#「共通傾向」に傍点]を取て批評するといふのも亦た批評の一方であると思ふ。
 一般に、仝一名稱を標榜して居る多數の思想は、顯正の方面に於ては一致が困難であつても、破邪の方面に於ては大體一致して居ることが多い。殊に新生の主義の場合に於てさうである、「プラグマティズム」などが積極即ち顯正の方面の意見に於ては十人十色であるけれども、その目指す敵は何であるかといふ點に於ては大體一致し得る樣に思ふ。如何なる風潮に反抗して起つたか[#「如何なる風潮に反抗して起つたか」に傍点]といふ點に於ては大體一致して居る樣に思ふのであります。自然主義も亦たさうである。積極的の藝術觀人生觀に於ては十人十色であるが、消極の方面に於ては其間に共通の傾向が明かに認めらるゝのである。
 尤も其共通の傾向と申しても種々の方面よりして考察して見ることが出來やう。例へばロマンティック派が余り理想に偏して現實を遠かつたに反對して現實に皈れといふ態度を取つたものと見るこ
前へ 次へ
全15ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
朝永 三十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング