簡単な――したがってみずから取り扱いやすい――概念的範疇を作っておいて万事をテキパキと処理しうる能力と度胸とができなければ決してよい役人にはなれない。これに反してこれができるようになると、彼は頭がいいとか腕があるとかいわれて、出世できるようになるのである。
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第三条 およそ役人たらんとする者は平素より縄張り根性の涵養に努むることを要す。
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学校では、国家は矛盾なき一個の統一体である、と教える。だからすべての官庁は統一体たる国家の政治作用を分担するものとして国家目的のため互いに調和的に協働すべきものと観念されている。しかし実際の役所をそういうものと考えて役人になったら非常な間違いである。すべての役所はあらゆる機会を利用して自分の縄張りをひろげようと努力している。そのために常時積極的ないし消極的の権限争議をやっているのが現在の役所である。彼らは自己の縄張りを拡張したり維持するために、必要があると、国民の利益はもとより国家的利益をすら無視してなんらはばかるところがない。ある役所でなにか新しい仕事を始めようとすると必ずやほ
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