った。一時の例外的現象にすぎない明治の夢を今もなおみていてはならぬ。目をあけて世の中を見よ。暁明はまさに来らんとしている。われわれは、みずから考えみずから行って、みずからの道徳を創造せんとしている。私はかく高唱しつつ、今後の国家と役人とがもっともっと謙虚なものになってほしいと希望するのです。
そうして国家も役人も、われわれ普通の人間の考え方を制御することにのみ腐心せずに、むしろみずからをむなしうして、みずからもまた普通の人間と同様に考えうるようになることを心がけてほしいのです。なぜならば、「役人の頭」が「人民の頭」と一致することは国家制度の生きてゆく最小限度の要件であるから。
一三
今や役人はその態度と考え方とをあらためねばならぬ。「指導」より移って「謙虚」につかねばならぬ。そうしてわが国人をして真に世界人として世界人類の文化のために貢献しうるように、自由に考え、自由に行わしめ、もってその創造力と独自性とを十分に発揮せしめねばならない。そうしてそのことは「思想」の問題、「道徳」の問題、「美術文芸」の問題について、ことに痛切に感ぜられます。なぜならば、これらの問題は
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