しばりすぎれば――その当然の結果として役人の行動が形式化しやすいのは当然です。なぜならば、自由のないところに責任は生まれないから。換言すれば、法治国はきわめて官僚主義におちいりやすい素質をもったものだといいうるのです。ただその素質、傾向をしてあまりはなはだしきに至らしめない唯一のよりどころは役人の心がけです。これ私が「役人の頭」のみが今日の国家制度を生かしてゆく唯一の頼りだというゆえんであります。
一〇
次にまた役人は大なる権力の持ち主です。「人間の世界」は別として、ひとたび「法律の世界」に入ったが最後、その世界に通用するだけの是非善悪は、ともかくも、すべて役人によって認定されることになっています。むろん役人といえども法律によって大いに束縛されている。また下級の役人の判断は上級の役人によって監督され批評される仕組みにできている。けれども、訴訟手続がめんどうにできているとか、また証拠をあげることが困難であるとか、その他種々の理由によって、たとえ役人のあやまった不当な判断によって権利利益を害された者でも、事実上、上級の役人に訴えてその批判を受けることが困難になっています
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