が、特に初学者に法学の学習をむずかしい、もしくはつまらないものと感じさせる原因となり、もしくは法学そのものを非科学的に感じさせる原因になっているのではないかと私は考えている。

     四 法のあるべき姿――その理想的体系

 十 私は、法学本来のあるべき姿は、もっと科学的なものでなければならないと考えている。現在多くの大学で教えられているいろいろの教科目にしても、それら相互の間に理論的の脈絡をつけて体系立ててみれば、もっと科学の名にふさわしい法学が成り立ち、もっと学生の理性を満足せしめ得るような法学教育が行われ得るのではないかと考えている。
 以下にこの点に関する私の考えを素描すると、先ず第一に、法学の中心をなすものは「実用法学」であって、それは解釈法学と立法学とに大別されるが、その両者に通ずる科学としての本質は法政策学である。立法学は一定の政治目的のために、最もその目的に適った法令を作る科学的方法を研究する学であり、解釈法学は個々の具体的事件に適正な法的取扱いを与える科学的方法を研究する学である。科学としての解釈法学は、単に法令を形式的に解釈することを目的とする技術ではなくして、
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