って、講義を聴いたり教科書を読む際にも、教師や著者が与えている解釈の結論にのみ重きを置くことなく、むしろその結論がいかなる理論により、いかなる技術を通して導き出されたかの経路に留意して、自らの解釈能力の涵養に役立たせる努力をしなければならない。
 (2)[#「(2)」は縦中横] 次に、初学者として是非とも知っておかなければならないことは、今でも法律家のあいだには「法秩序の完全無欠性」というドグマが力を持っていることである。例えば、裁判官は必ず法によって裁判しなければならない、裁判は必ず法―事実―裁判という三段論法の形式をとらなければならない、しかもその法は常に、必ずあらかじめ存在する、裁判官はその存在する法を見出してそれによって裁判をしなければならない、ということが一般に信ぜられているものである。裁判は必ず法によってなされねばならない、裁判官が法によらずに勝手な裁判をしてはならないということは、法治国における司法の根本原理で、これは誰にも理解できることであるが、そのよるべき法が、いかなる場合にも常に、必ずあらかじめ存在しているというのはどう考えても不合理である。それにもかかわらず、今な
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