法律の話をわざわざ三〇銭も出して諸君が聴きに来るのですから、そこにはそれ相当の理由がなくてはならないと思います。それで私は、諸君が法律に対してなにか興味をもたれ、また同時にある不足を感じておられる、その不足を充たすべき何物かをどこかに求めたいという希望が諸君の足を自然ここに引きつけたのではあるまいかと考えております。
ところで、法律はそんなむずかしいものでしょうか、またむずかしかるべきものでしょうか? 学者や法律家はよくこんなことを申します。「法律は別にむずかしいものではない、素人にはわからないかもしらぬが、われわれには非常によくわかっている」と、こう申すのです。ところが私など一〇年あまりもだんだんと法律学を研究してみましたが、法律学は依然としてむずかしく、そうしてわれわれ法律家にとってもいやに不自然なむずかしいことがたくさんあるように思われてならない。どうもわれわれの本当の人間らしいところに何かしっくりと合わない点があるように思われてならない。そうしてその感じは時とともにだんだん強くなるばかりです。
私が外国に行く前によくこんな話を聞きました。イギリスでは法律を学ぶためにロンドン
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