A同時にまた精緻な「論理」に足をすくわれて意気阻喪しやすい若者を鼓舞して勇ましく「新組織」への戦いに従事せしめることができよう。また従来深く根を張った「概念法学」「官僚主義」「形式主義」を打破する効力はあろう。しかし、もしも、学者のなすところがそれのみにとどまるならば、その功績はきわめて一時的である。過渡的である。ただ旧きを壊す以外、なんら人類文化のために新しいものを建設するものではない。おそらくは彼らが前門に「概念法学」を打破しえた暁には「公平」と「自由」との要求が後門よりただちに攻めきたりて彼らを撃つであろう。もしかくのごとくんば、みずからたまたま波の頭に立ってその谷にあるものの低きを笑うとなんらの差異があるか。やがては彼らみずからが波谷におちいって追い来る人々の笑いを招かねばならぬ。かかるものにはたしてどれだけの文化的価値があるか、私は心からこれを疑うのである。
 いたずらに、むなしき「理想」を説き「公の秩序、善良の風俗」を云為する者は、結局、裁判官の専制を許容するものでなければなりません。やたらに「自由法」を主張して結局その目的を達した暁に、再び「自由」と「公平」との保障を探し
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