たしたちの関係は事務上の関係でございましたが、しかし非常に親しくして頂いておりました。わたしはその頃わたしどものフランスの店におりまして、それまでには――そう! 二十年間もそこにおりましたのですが。」
「その頃――と仰しゃいますと、いつ頃なのでございましょうかしら?」
「わたしは、お嬢さん、二十年前のことをお話申しておるのです。その方《かた》は御結婚なさいました、――イギリスの御婦人とでした。――そしてわたしは財産管理人の一人になりました。その方《かた》の財務上の事は、他《ほか》のたくさんのフランスの紳士方やフランスの御家庭の財務と同様に、すっかりテルソン銀行に任せてございましたのです。そんな風にして、わたしは現在、いや以前から、たくさんのお得意さまのあれやこれやの管理人になっております。これは皆ただの事務上の関係ですよ、お嬢さん。それには友情とか、特別の関心とかはなく、感情といったようなものは何もないのです。わたしは事務の人間として今日までの生涯を送って来ました間に、そういうのの一つから他《ほか》のにと移って参りました。それは、ちょうど、わたしが毎日事務を執っています間に、一人のお得
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