ール》! 閣下《モンセーニュール》!」
 側仕は彼女を扉《ドア》から押し除け、馬車は急に疾《はや》い早足で駈け出し、馭者は馬の足を速めさせたので、彼女は遥かの後に取残され、そして閣下《モンセーニュール》は、再び蛇髪復讐女神《フュアリー》に護衛されて、彼と彼の館《やかた》との間に残っている一二リーグ★の距離を急速に短縮しつつあった。
 夏の夜の甘い香《かおり》は彼の周囲一面にたちこめた。そしてまた、そこから遠く離れてもいない飲用泉のところにいる、塵まみれの、襤褸《ぼろ》を著た、働き疲れた群《むれ》の上にも、雨の降るように、偏頗なくたちこめた。その群《むれ》に向って、例の道路工夫は、彼の全部であるところの例の青い帽子の助けを藉りて、彼等の辛抱出来る限り、さっきの幽霊のような男のことをまだ頻りに述べ立てていた。そのうちに、だんだんと、彼等は辛抱が出来なくなるにつれて、一人一人と減ってゆき、小さな窓々の中に灯火が瞬き出した。その灯火は、窓が暗くなってもっと星が出て来るにつれて、消されたのではなくて空へ打ち上げられたように思われた。
 その頃、屋根の高い大きな家と、枝を拡げたたくさんの樹木との影
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