手前はそいつを一度も見たことがござりませなんだ。」
「鎖にぶら下っておったと? 息《いき》を詰らすためか?」
「御免を蒙りまして申し上げますが、それが不思議なところでございましたよ、閣下《モンセーニュール》。そいつの頭は仰向にぶら下っておりました、――こんな風に!」
彼は馬車に対して横になるように体《からだ》を向け、反《そ》り返って、顔を空の方へ振り向け、頭をだらりと下げた。それから、体を元へ戻して、帽子をいじくって、ぴょこんと一つお辞儀をした。
「そやつはどんな様子をしておったか?」
「閣下《モンセーニュール》、その男は粉屋よりも真白でござりました。すっかり埃《ほこり》をかぶって、幽霊のように白くって、幽霊のように脊が高く★って!」
この画のような言い方はそこにいた小さな群集に非常な感動を惹き起した。が、すべての眼は、他の眼と※[#「目+旬」、第3水準1−88−80]《めくば》せもせずに、侯爵閣下を眺めた。たぶん、彼には良心を悩ます幽霊などというものがいるかどうかということを観察するためであったのだろう。
「なるほど、お前はでかしおったわい。」と侯爵は、こういう虫けらどもを相手に
前へ
次へ
全341ページ中265ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ディケンズ チャールズ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング