には穀物が実ってはいるが、豊かではない。麦のあるべき処にみすぼらしいライ麦の畑。みすぼらしい豌豆《えんどう》や蚕豆《そらまめ》の畑、ごく下等な野菜類の畑が小麦の代りになっている。非情の自然にも、それを耕している男女たちに見ると同様に、不承不承に生長しているように見える一般的な傾向――諦めて枯れてしまおうとする元気のない気風。
侯爵閣下は、四頭の駅馬と二人の馭者とによって嚮導された、彼の旅行馬車(それはいつもの馬車よりは軽快なものであったかもしれなかった)に乗って、嶮しい丘をがたごとと登っていた。侯爵閣下の面上の赤味は彼の立派な躾の非難になるものではなかった★。それは内から起ったものではなかった。それは彼の意力ではどうにも出来ぬ一つの外的の事情――沈みゆく太陽のためになったものであった。
旅行馬車が丘の頂上に達した時にその落陽は非常に燦然と車内へ射し込んで来たので、中に乗っている人は真紅色に浸された。「もうじきに、」と侯爵閣下は自分の手をちらりと眺めながら言った。「薄らぐじゃろう。」
事実、太陽は地平線に近く傾いていたので、その瞬間に没しかけた。重い輪止《わどめ》が車輪にかけられて
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