うなことが、フランスと似たようなのに恵まれているあらゆる国々にとって常にそうであるように! ――(一例としては)国を売った陽気なステューアト★のあの遺憾な時代のイギリスにとって常にそうであったように。
モンセーニュールは総体から見た公務について一つの真に高貴な意見を持っていた。その意見というのは、一切のものをしてそれ自身の路を進ましめよ、というのであった。箇々の公務については、モンセーニュールはそれとは別のやはり真に高貴な意見を持っていた。それは、一切のものはことごとく彼の路を歩まねばならぬ――彼自身の権力と財嚢とを肥す方へ行かねばならぬ、というのであった。総体から見たものと箇々のものとを含めて彼の快楽については、モンセーニュールはまた別のやはり真に高貴な意見を持っていた。それは、この世は彼の快楽のために造られたのだ、というのであった。彼の法則の本文は(原文とは代名詞一つだけ変っているが、それは大したことではない)こうなっていた。「モンセーニュール曰《い》いけるは、地とこれに盈《み》てる物はわがものなり。★」
それにもかかわらず、モンセーニュールは、卑俗な財政困難ということが彼の公私両方の財政に這い込んでいるのに、ようようにして気がついて来た。それで、彼は、その両方面の財政に関しては、やむをえず収税請負人★と結託したのであった。公の財政に関しては、モンセーニュールはそれを全くどうすることも出来なかったので、それゆえ誰かそれをどうにか出来る者に任《まか》さなければならなかったからであるし、私の財政に関しては、収税請負人は富裕であって、モンセーニュールは代々の非常な奢侈と浪費との結果として貧しくなりつつあったからである。そこで、モンセーニュールは、修道院にいる彼の妹を、彼女が身に著け得る最も廉価な衣装である面紗《ヴェール》をかぶる★のが差迫っているのを断《ことわ》るにまだ時がある間に、そこから連れ戻して、家柄は賤しいがすこぶる富裕な一人の収税請負人に、褒美として彼女を与えたのであった。この収税請負人は、頭部に黄金の林檎のついた身分相応な杖を携えながら、今、外側の室の来客の中にいて、人々に大いに平身低頭されていた。――もっとも、モンセーニュール一門の優秀な人種だけは常にその例外で、その連中は、彼の妻もその中に含めて、最も高慢な侮蔑の念をもって彼を見下《みくだ》していた
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