なって来たと云った時には、一層それが顫えていた。
せわしない[#「せわしない」に傍点]、小さな撞木杖の音が床の上に聞えた。そして、次の言葉がまだ云い出されないうちに、ちび[#「ちび」に傍点]のティムは彼の兄や姉に護られて、もう煖炉の傍の自分の床几に戻って来た。その間ボブは袖口をまくり上げて――気の毒な者よ、あんな袖口がこの上まで汚《よご》れようがあるか何ぞのように――ジン酒と檸檬で鉢の中に一種の熱い混合物《まぜもの》を拵えた。そして、それをぐるぐる掻き廻してから、とろ[#「とろ」に傍点]火で煮るために炉側の棚の上に載せた。ピーター君と二人のちょこまか[#「ちょこまか」に傍点]した小クラチットどもは鵞鳥を取りに出掛けたが、間もなくそれを持って仰々しい行列を作って帰って来た。
あらゆる鳥の中で鵞鳥を最も稀有なものと、諸君が思われたかも知れないような騒ぎが続いて起った。羽の生えた怪物、それに比べては、黒い白鳥も異とするに足りない――で、実際この家では鵞鳥がまずそれと同じようなものであった。クラチット夫人は肉汁(前以て小さな鍋に用意して置いた)をシューシュー煮立たせた。ピータア君はほとんど
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