で、粗末ながらにすっかり身繕いをして、しかし廉《やす》くて、六ペンスにしては好く見えるリボンで華やかに飾り立てて出て来た。そして彼女は、これもまたリボンで飾り立てている二番目娘のベリンダ・クラチットに手伝わせて、食卓布をひろげた。一方では、子息のピータア・クラチットが馬鈴薯の鍋の中に肉叉を突込んだ。そして、恐ろしく大きな襯衣《シャツ》(この日の祝儀として、ボブが彼の子息にして嗣子なるピーターに授与したる私有財産)の襟の両端を自分の口中に啣えながら、我ながらいかにも華々しくめかし込んだのに嬉しくなって、流行児の集まる公園に出懸けて自分の下着を見せたくて堪らなかった。さて、二人の一層小さいクラチット達、すなわち男の児と女の児とは、麺麭屋の戸外で鵞鳥の匂いを嗅いだが、それが自分達のだと分ったと云って、きゃあきゃあ叫びながら躍り込んで来た。そして、これ等の小クラチット達はサルビヤだの葱だのと贅沢な考えに耽りながら、食卓の周囲を躍り廻って、ピータア・クラチット君を口を極めて褒めそやした。その間に彼は(襯衣の襟が咽喉を締めそうになっていたが、別段自慢もしないで)のろのろした馬鈴薯が漸く煮えくり返り
前へ
次へ
全184ページ中96ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ディケンズ チャールズ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング