はありませんよ。」
「気の折れるどころではないのさ」と、彼女の良人は云った。「あの人は死んだんだよ。」
彼女の顔つきが真実を語っているものなら、彼女は温和《おとな》しい我慢強い女であった。が、彼女はそれを聞いて、心の中に有難いと思った。そして、両手を握ったまま、そうと口走った。次の瞬間には、彼女も神の宥免を願った。そして、(相手を)気の毒がった。が、最初の心持が彼女の衷心からの感情であった。
「昨宵お前に話したあの生酔いの女が私に云ったことね、それ、私があの人に会って、一週間の延期を頼もうとした時にさ。それを私は単に私に会いたくない口実だと思ったんだが、それはまったく真実《ほんとう》のことだったんだね。ただ病気が重いと云うだけじゃなかったんだ、その時はもう死にかけていたんだよ。」
「それで私達の借金は誰の手に移されるんでしょうね?」
「そりゃ分からないよ。だが、それまでには、こちらも金子の用意が出来るだろうよ。たとい出来ないにしても、あの人の後嗣《あとつぎ》がまたあんな無慈悲な債権者だとすれば、よっぽど運が悪いと云うものさ。何しろ今夜は心配なしにゆっくりと眠られるよ、キャロライン!」
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