方の妹を追い廻わした様子というものは、誰も知らないと思って人を馬鹿にしたものであった。火箸や十能に突き当たったり、椅子を引っくり返したり、洋琴に打っ突かったり、窓帷幄に包まって自分ながら呼吸が出来なくなったりして、彼女の行く所へはどこへでも随いて行った。彼はいつでもその肥った娘がどこに居るかを知っていた。彼は他の者は一人も捕へようとしなかった。若し諸君がわざと彼に突き当りでもしようものなら(彼等の中には実際やったものもあった)、彼も一旦は諸君を捕まえようと骨折っているような素振りをして見せたことであろうが、――それは諸君の理性を侮辱するものであろう、――直ぐにまたその肥った娘の方へ逸れて行ってしまったものだ。彼女はそりゃ公平でないと幾度も呶鳴った。実際それは公平でなかった。が、到頭彼は彼女を捕まえた。そして、彼女が絹の着物をさらさらと鳴らせたり、彼を遣り過ごそうとばたばた藻掻いたりしたにも係らず、彼は逃げ場のない片隅へ彼女を追い込めてしまった。それからあとの彼の所行というものは全く不埒千万なものであった。と云うのは、彼が自分に相手の誰であるかが分からないと云うような振りをしたのは、彼女
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