希望を加えて話したりしていた。そして、その船に乗っている者は、起きていようが眠っていようが、善い人であろうが悪い人であろうが、誰も彼もこの日は一年中のどんな日よりも、より[#「より」に傍点]親切な言葉を他人に掛けていた。そして、ある程度まで今日の祝いを共に楽しんでいた。そして、誰も彼も自分の心に懸けている遠方の人達を想い遣ると共に、またその遠方の人達も自分のことを想い出して喜んでいることをよく承知していた。
風の呻きに耳を傾けたり、またはその深さは死の様に深遠な秘密であるところの未だ知られない奈落の上に拡がっている寂しい暗い闇を貫いて、どこまでも進んで行くと云うことは、何と云う厳粛なる事柄であるかと考えたりして、こうして気を取られている間に、一つの心からなる笑い声を聞くと云うことは、スクルージに取って大きな驚愕に相違なかった。しかも、それが自分の甥の笑い声だと知ることは、そして、一つの晴れやかな、乾いた、明るい部屋の中に、自分の傍に微笑しながら立っている精霊と一緒に自分自身を発見すると云うことは、スクルージに取って一層大いなる驚愕であった。で、その精霊はいかにも相手が気に適ったと云う
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