寝坊をするつもりだとか云うことを話した。また、彼女はこの間一人の伯爵夫人と一人の華族様とを見たが、その貴公子は「ちょうどピータア位の身丈《せい》恰好《かっこう》であった」とも話した。ピータアはそれを聞くと、たとい読者がその場に居合せたとしても、もう彼の頭を見ることは出来なかったほど、自分のカラーを高く引張り上げたものだ。その間栗と壺とは絶えずぐるぐると廻されていた。やがて一同はちび[#「ちび」に傍点]のティムが雪の中を旅して歩く迷児《まいご》のことを歌った歌を唄うのを聞いた。彼は悲しげな小さい声を持っていた。そして、それを大層上手に唄った。
これには別段取り立てて云うほどのことは何もなかった。彼等は固より立派な家族ではなかった。彼等は身綺麗にもしていなかった。彼等の靴は水が入らぬどころではなかった。彼等の衣服は乏しかった。ピータアは質屋の内部を知っていたかも知れない、どうも知っているらしかった。けれども、彼等は幸福であった、感謝の念に満ちていた、お互に仲が好かった、そして今日に満足していた。で、彼等の姿がぼんやりと淡くなって、しかも別れ際に精霊が例の松明から振り掛けてやった煌々たる滴
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