をすっかり負かしてしまうか、さもなければ自分が斃れるまでやり抜こうと決心した真新しい人間でもあるように。
 その上にもまだ舞踏があった、また罰金遊びもあった。そして、更にまた舞踏があった。それから菓子が出た、調合葡萄酒が出た、それから大きな一片の冷えた焼肉が出た、それから大きな一片の冷えた煮物が出た。それから肉饅頭が出た、また麦酒が[#「麦酒が」は底本では「麦酒か」]沢山に出た。が、当夜第一の喚び物は焼肉や煮物の出た後で、提琴手が(巧者な奴ですよ、まあ聴いて下さい!――読者や私なぞがこうしろああしろと命ずるまでもなく、ちゃんと自分のやるべきことを心得ていると云う手合ですよ!)「サー・ロージャー・ド・カヴァリー」(註、古風な田舎踊の名、当時非常に流行したものらしく、メレディスの「エゴイスト」の中にも出て来る。)を弾き始めた時に出たのであった。その老フェッジウィッグはフェッジウィッグ夫人と手を携えて踊りに立ち出でた。しかも、二人に取っては誂え向きの随分骨の折れる難曲に対して、先頭の組を勤めようと云うのだ。二十三四組の踊手が後に続いた。いずれも隅には置けない手合ばかりだ。踊ろうとばかりしていて、歩くなぞと云うことは夢にも考えていない人達なのだ。
 が、彼等の人数が二倍あっても――おお、四倍あっても――老フェッジウィッグは立派に彼等の対手になれたろう、フェッジウィッグ夫人にしてもその通りだ。彼女はと云えば、相手という言葉のどういう意味から云っても、彼の相手たるに応わしかった。これでもまだ讃め足りないなら、もっと好い言葉を教えて貰いたい、私はそれを使って見せよう。フェッジウィッグの腓《ふくらはぎ》からは本当に火花が出るように思われた。その腓《ふくらはぎ》は踊のあらゆる部分において月のように光っていた。ある一定の時において、次の瞬間にその腓《ふくらはぎ》がどうなるか予言せよと云われても、何人にも出来なかったに相違ない。老フェッジウィッグ夫婦が踊の全部をやり通した時――進んだり退いたり、両方の手を相手に懸けたまま、お叩頭をしたり、会釈をしたり、手を取り合ってその下をくぐったり、男の腕の下を女がくぐったり、そして、再びその位置に返ったりして、踊の全部をやり通した時、フェッジウィッグは「飛び上った」、――彼は足で瞬きをしたかと思われたほど巧者に飛び上った。そして、蹌踉《よろめ》きもせ
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