らい子じゃ! どうだい、君はあそこに下がっていた、あの賞牌を取った七面鳥が売れたかどうか知っているかね。――小さい方の賞牌つき七面鳥じゃないよ、大きい方のだよ?」
「なに、あの僕位の大《で》っかいのかい」と、少年は聞き返した。
「何て愉快な子供だろう!」と、スクルージは云った。「この子と話しをするのは愉快だよ。ああそうだよ! 阿兄《にい》さん!」
「今でもあそこに下がっているよ」と、少年は答えた。
「下がってるって?」と、スクルージは云った。「さあ行って、それを買って来ておくれ。」
「御戯談でしょ」と、少年は呶鳴った。
「いや、いや」と、スクルージは云った。「私は真面目だよ。さあ行って買って来ておくれ。そして、ここへそれを持って来るように云っておくれな。そうすりゃ、私が使の者にその届け先を指図してやれるからね。その男と一緒に帰ってお出で、君には一シリング上げるからね。五分経たないうちに、その男と一緒に帰って来ておくれ、そうしたら半クラウンだけ上げるよ。」
少年は弾丸《たま》のように飛んで行った。この半分の速力で弾丸を打ち出すことの出来る人でも、引金を握っては一ぱし確かな腕を持った打ち手に相違ない。
「ボブ・クラチットの許へそれを送ってやろうな」と、云いながら、スクルージは両手を擦《こす》り擦り腹の皮を撚らせて笑った。「誰から贈って来たか、相手に分っちゃいけない。ちび[#「ちび」に傍点]のティムの二倍も大きさがあるだろうよ。ジョー・ミラー(註、「ジョー・ミラー滑稽集」の著者。)だって、ボブにそれを贈るような戯談をしたことはなかったろうね。」
ボブの宛名を書いた手蹟は落着いてはいなかった。が、とにかく書くには書いた。そして、鳥屋の若い者が来るのを待ち構えながら、表の戸口を開けるために階子段を降りて行った。そこに立って、その男の到着を待っていた時、彼は不図戸敲きに眼を着けた。
「俺は生きてる間これを可愛がってやろう!」と、スクルージは手でそれで撫でながら叫んだ。「俺は今までほとんどこれを見ようとしたことがなかった。いかにも正直な顔附きをしている! まったく素晴らしい戸敲きだよ! いよう。七面鳥が来た。やあ! ほう! 今日は! 聖降誕祭お目出度う!」
それは確かに七面鳥であった。こいつあ自分の脚で立とうとしても立てなかったろうよ、この鳥は。(立ったところで、)一分も経
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