[から端まで五千ブラストラグにわたり、帝王中の帝王として、人の子より背が高く、足は地軸にとゞき、頭は天を突き、一度首を振れば草木もなびき、その徳は春、夏、秋、冬に通じる。こゝにこの大皇帝は、この頃、わが神聖なる領土に到着した人間山に対し、次の条項を示し、厳粛に誓わせ、その実行を求めるものである。

 第一 人間山は朕の許可状なしに、この国土を離れることはできない。
 第二 人間山は朕が特に許した場合でなくては、勝手に首都に入ることはできない。首都に入るときは、市民は二時間前に、家の中に引っ込んでいるように注意されることになっている。
 第三 人間山の歩いてもいゝ場所は主要国道だけに限られている。牧場や畠地を歩いたり、そこで寝ころんだりすることは許されない。
 第四 人間山が主要国道を歩く際には、朕の良民、馬、車などを踏みつけないよう、よく注意すること。また良民の承知なしに矢鱈《やたら》に人をつまみあげて掌に乗せることはできない。
 第五 急用の使が要る際には、毎月一回、その伝令と馬を人間山のポケットに入れて運ぶこと。また場合によっては、さらにこれを宮廷に送り返さねばならない。
 第六 
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