驍ノ注意しておいて、ドンと一発、空に向って打ちました。
 今度の驚きは、短刀どころの騒ぎではありません。何百人の人間が打ち殺されたように、ひっくりかえりました。皇帝はさすがに倒れなかったものゝ、眼をパチ/\されています。私は短刀と同じように、このピストルを引き渡しました。それから、火薬と弾丸の入った革袋も渡しました。そして、
「この火薬は火花が一つ飛んでも、宮殿も何もかも吹き飛ばしてしまいますから、どうか火に近づけないでください。」
 と注意しておきました。
 それから、懐中時計を渡しました。皇帝はこの時計を非常に珍しがり、一番背の高い二人の兵士に、それを棒にかけて、かつがせました。絶えず時計がチクタク音を立てるのと、時計の長針が動いているのを見て、皇帝は大へん驚きました。この国の人たちは、私たちより目がいゝので、分針の動いているのまで見分けがつくのです。一たいこれは何だろう、と皇帝は学者たちにお尋ねになりましたが、学者たちの答えはまち/\で、とんでもない見当違いもありました。
 次に私は銀貨と銅貨を取り出し、それから櫛《くし》や嗅《かぎ》タバコ入れ、ハンカチ、旅行案内などを、みんな渡
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