ィを入れて、その上に赤ん坊の寝台を置いてくれました。私の下着やシャツなんかも、みんな、彼女がとゝのえてくれ、何不自由なくしてくれました。私たちの後から、家の小僧が一人、荷物を持ってついて来ました。
主人の考えでは、この旅は途中の町で見世物を開き、客のありそうな村や、貴人の家には、五十マイルや百マイルは、寄り道するつもりだったらしいのです。私たちは毎日わずかに百四五十マイルぐらいずつ進み、大へんらくな旅をしました。グラムダルクリッチが私を庇《かば》うために、馬の揺れですぐ自分の方が疲れてしまうと言ってくれたからです。私が頼むと、彼女はたび/\、箱から出しては、外の空気を吸わせてくれたり、景色を見せてくれました。そんなとき、彼女は紐でしっかり私を引っ張っていてくれるのでした。
私たちはナイル河やガンジス河よりも、何倍も大きな河を、五つ六つ越したのです。ロンドンのテムズ河みたいな、小さな川は一つもないのです。この旅行は十週間かゝりました。私たちは十八の大都市に立ち寄り、それから村々や、貴人の家で、何十回となく、見世物になりました。
十月二十六日に、いよ/\、私たちは国都に着きました。その国都の名はローブラルグラットといわれ、これは『世界の誇』という意味でした。主人は宮殿から程遠くない、目抜きの大通りに宿をとりました。そして、この私のことを、くわしく書いたビラを、あちこちに貼り出しました。それから、方三四百フィートもある、大きな部屋を借りて、そこに、私の舞台として、直径六十フィートばかりのテーブルを置きました。そして、私が落っこちないように、テーブルの縁から三フィート入ったところに、高さ、三フィートの柵をめぐらしました。
私は毎日、十回ずつ見世物にされましたが、人々はすっかり感心して、大満足のようでした。私はこの頃、もうかなりうまく言葉が使えて、話しかけられる言葉なら、何でもわかるようになっていました。そのうえ、家にいるときも、旅行中も、いつもグラムダルクリッチが私の先生になってくれたので、この国の文字もおぼえ、ちょっとした文章なら説明することができるようになりました。彼女はポケットに小さな本を入れていました。それは若い娘たちによく読まれる本で、宗教のことが簡単に書いてあります。その本を使って、彼女は私に字を教えたり、言葉を説明してくれるのでした。
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