sけるでしょう。つきましては、出発の許可をいたゞいて、いろ/\準備することをお許しください。」
 とお願いしました。
 皇帝は思いとゞまってはどうかと言われましたが、ついに喜んで許してくださいました。
 さて、リリパット国では、私がブレフスキュ国皇帝のところへ行ったのは、それはただ、前の約束をはたすために行ったので、二三日すれば帰って来るだろう、と思っていました。ところが、いつまでたっても、私が戻らないので、とう/\やきもきして、大臣一同が会議を開きました。その相談のあげく、一人の使者が、リリパット皇帝の手紙を持って、ブレフスキュ皇帝に会いにやって来ました。その手紙は、私の手足をしばって、リリパットへ送り返してくれというのでした。
 その返事はこうでした。私をしばって送り返すことなど、とてもできないことは、すでにリリパット皇帝も知られるとおりだし、それに間もなく、私はブレフスキュ国を去ることになっているので、御安心ください、というのでした。
 とにかく、私はなるべく早く出発しようと思いました。宮廷の方でも一日も早く行ってもらいたいのでいろ/\手助けをしてくれます。五百人の職人がかゝって、ボートにつける二枚の帆をこしらえました。私の指図にしたがい、一番丈夫な布を、十三枚重ねて縫い合わせました。私は一番丈夫な太い綱を、十本、二十本、三十本と、一生懸命に、ない合わせました。それから海岸を探しまわって、錨の代りになりそうな、大きな石を見つけました。ボートに塗ったり、そのほかいろんなことに使うため、三百頭の牛の脂をもらいました。何より骨の折れたのは、オールとマストにするため、大きな木を伐り倒すことでした。しかし、これは陛下の船大工が手伝ってくれて、私がたゞ粗けずりすれば、あとは大工が綺麗に仕上げてくれました。
 一月もすると、準備はすっかり出来上りました。私はいよ/\出発の許可の御命令がいたゞきたい、と陛下に願いました。陛下は皇族たちと一しょに宮殿から、わざ/\出て来られました。私は皇帝の手にキスしようとして、うつ伏せに寝ました。
 陛下は快く手を貸してくださいます。皇后も、皇子たちも、みな手にキスを許してくださいました。それから、皇帝は二百スプラグ入りの金袋を五十箇と、陛下の肖像画を私にくださいました。肖像画の方は、いたまないように、すぐ片一方の手袋の中にしまっておきました
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