。そのまゝ海岸の方へ歩いて行きました。
そこで大きな軍艦を一隻つかまえ、綱を結びつけ、錨を上げると、裸になって、着物は軍艦に積み込みました。それから、その船を引っ張って、歩いたり泳いだりしながら、ブレフスキュの港に着きました。
向うでは私の来るのを待ちかねていたところです。二人の案内者をつけて、首都まで案内してくれました。私は二人を両手に乗せて、城の近くまで行きましたが、こゝで、誰か大臣に知らせてきてくれ、と頼みました。
しばらく待っていると、皇帝御自身が私を出迎えになるということでした。私は百ヤードばかり歩いて行きました。皇帝とその従者たちは、馬からおりられました。皇后は馬車からおりられました。みんな、少しも私を怖がっている様子はありません。私は地面に横になって、陛下の手にキスしました。それから、いつかの約束どおり、リリパット皇帝の許しを得て、今このとおりブレフスキュ大帝にお目にかゝりに来ました、私の力でできることなら何でもいたします、と、私はこう申し上げました。
私がブレフスキュ島へ来てから三日目のことでした。
島の北東の岸をぶら/\歩いて行ってみると、沖の方にボートのような物のひっくりかえっているのが見えます。さっそく、靴を脱いで、二三百ヤード海の中を歩いて行ってみると、その物は潮に乗って、だん/\近づいて来るように見えます。よく見ると、ほんとのボートです。たぶん、これは嵐にあって本船から流されたのでしょう。
私はすぐ首府へ引っ返して、皇帝にお願いして、二十隻の軍艦と三千人の水兵を借りてきました。それから私は海に入って、ボートのところへ泳いで行きました。水兵たちが軍艦から綱の端を投げてくれたので、それをボートの穴に結びつけ、もう一方の端は、軍艦に結びつけました。さらに私は泳ぎながらいろ/\骨を折って、九隻の軍艦にボートの綱を結びつけました。ちょうど風向きもよかったので、私はボートを押し、水兵は引っ張り、こうして、とう/\海岸に来ました。
それから十日ばかりかゝって、オールをこしらえ、それでやっと、ブレフスキュの港へ、ボートを漕いで入ったわけです。私が港へ着くと、大へんな人出で、なにしろ、あんまり大きな船なので、すっかり仰天していました。私は皇帝に向い、
「天の祐《たすけ》で、ボートが手に入りました。これに乗って行けば、私の故国へ帰れるところまで
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