コの庭園に、戦場の光景が現れました。それから、アレキサンダー大王は、私たちの部屋へ呼ばれてやって来ました。しかし、彼の話すギリシャ語は、私にはどうもよく通じませんでした。
次には、ハンニバルがアルプスの山を越すところを見せてもらいました。
その次には、シーザーとポンペイが、それ/″\、陣地に立って、戦争をはじめようとしているところを見せてもらいました。そして、シーザーが大勝利をするところも見ました。
私は次に、ひとつ最も偉い学者たちを見たいものだ、と思いました。そこで、酋長にこう頼みました。
「どうか、ホーマーとアリストテレスと、それから、その註釈家たちを、全部見せてください。」
すると、これはまた大へんな人数で、何百人という人間が、ぞろ/\と現れて来ました。私は一目見て、ホーマーとアリストテレスの顔はすぐわかりました。
ホーマーの方が背も高く、好男子でした。歩き方も、しゃんとしているし、それに、目はまるで人を突き刺すような、鋭い眼光でした。アリストテレスの方は、だいぶん腰が曲って、杖をついていました。それに髪も薄くなっているし、声にも力がないのでした。しかし、この二人の学者と、まわりの群衆とは、まるで何の縁故もないのだということは、私にもよくわかりました。
私はまる五日間、まだ/\、いろんな人間や学者たちと会いました。ローマの皇帝たちにも、大てい会いました。
いよ/\出発の日が来たので、私はグラブダブドリブの酋長と別れて、連れの紳士と一しょに、マルドナーダーへ帰りました。そして、この港で二週間ばかり待っていると、いよ/\、ラグナグ島行きの船が出ることになりました。この町の人たちは、大へん親切にしてくれて、私を、わざ/\船まで見送ってくれました。
航海は一ヵ月かゝりました。一度は暴風雨に会ったりしましたが、一七一一年四月二十一日に私たちの船はクルメグニグ河に入りまそした。
こゝは、ラグナグ国の東南にある港です。船は、この町から一リーグばかり手前で、錨《いかり》をおろし、水先案内に合図をしました。半時間もしないうちに、水先案内は二人連れでやって来ました。
ところが、船員の二三の者が、私のことを、外国人で、大旅行家だと、水先案内に話してしまったのです。するとまた、水先案内は、税関吏に、私のことを話しました。そのために、私は上陸すると、さっそく厳しい
前へ
次へ
全125ページ中88ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
スウィフト ジョナサン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング