ヲつゞけているのです。
彼の部屋は奇妙な品物で一ぱいでしたが、五十人の男たちが、彼の指図で働いていました。ある者は、空気をかわかして塊りにすることを研究していました。また、ある者は、石をゴムのように柔かくして、枕をこしらえようとしていました。生きた馬の蹄《ひづめ》のところを石にすることを考えている者もいました。
それから、これは私にはどうもよくわからないのですが、この有名な学者は、畑に籾《もみ》がらを蒔《ま》くことゝ、羊に毛の生えない薬を塗ることを、目下しきりに研究しているのだそうです。
私は道を横切って、向う側の建物に入りました。こゝの学士院には、学問の発明家がいるのでした。
私が最初に会った教授は、広い教室にいました。そこには四十人ばかりの学生が集っていました。教授は一つの便利な機械を考えていました。
その機械を使えば、どんな無学な人でも、何でも書けるのです。哲学、詩、政治学、数学、神学、そんなものが誰にでも、らくに書ける機械でした。教授は、その機械についていろ/\私に説明してくれました。
私はつゞいて国語学校を訪ねました。
こゝでは、三人の教授が国語の改良をいろ/\と熱心に考えていました。
一つの案は、言葉を全部しゃべらないことにしたらいゝ、というのでした。その方が簡単だし、健康にもよい、ものをしゃべれば、それだけ肺を使うことになるから、生命を縮める、というのです。
それで、その代りに、こんなことが発明されました。言葉というものは、物の名前だから、話をしようとするときには、その物を持って行って、見せっこをすれば、しゃべらなくても意味は通じるというのです。
しかし、これにも一つ困ることがあります。それはちょっとした話なら、道具をポケットに入れて持って行けばいゝのですが、話がたくさんある場合だと大へんです。そのときは、力の強い召使が、大きな袋に、いろんな品物を入れて、背負って行かなければなりません。
私は、二人の男が、ちょうどあの行商人のような恰好で、大きな荷物を背負っているのを、たび/\見たことがあります。二人の男が往来で出会うと、荷物をおろして、袋をほどき、中からいろんな品物を取り出します。こうして、かれこれ一時間ぐらい話がつゞいたかと思うと、品物を袋におさめて、荷物を背負って立ち上ります。
私はその次に数学教室を見物しました。
こゝ
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