、丸《まる》で虚《うそ》のやうな想《おもひ》がしました、後《のち》に巌谷《いはや》も此《こ》の初対面《しよたいめん》の時の事を言出《いひだ》して、私《わたし》の人物《じんぶつ》が全《まつた》く想像《さうざう》と反《はん》して居《ゐ》たのに驚《おどろ》いたと云《い》ひます、甚麼《どんな》に反《はん》して居《ゐ》たか聞きたいものですが、ちと遠方《ゑんぱう》で今|問合《とひあは》せる訳《わけ》にも行《ゆ》きません、
巌谷《いはや》の紹介《せうかい》で入社したのが江見水蔭《えみすゐいん》です、此《この》人は杉浦氏《すぎうらし》の称好塾《せうこうじゆく》に於《お》ける巌谷《いはや》の莫逆《ばくぎやく》で、其《そ》の素志《そし》と云《い》ふのが、万巻《ばんくわん》の書を読まずんば、須《すべから》く千里《せんり》の道を行《ゆ》くべしと、常《つね》に好《この》んで山川《さんせん》を跋渉《ばつせふ》し、内《うち》に在《あ》れば必《かなら》ず筆《ふで》を取つて書いて居《ゐ》る好者《すきもの》と、巌谷《いはや》から噂《うはさ》の有つた其《その》人で、始《はじめ》て社に訪《とは》れた時は紺羅紗《こんらしや》の
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