けいめう》な短編《たんぺん》を盛《さかん》に書いて居《ゐ》ました、其等《それら》を見て山田《やまだ》は能《よ》く話をした事ですが、此分《このぶん》なら一二|年内《ねんない》には此方《こつち》も打つて出て一合戦《ひとかつせん》して見やう、而《さう》して末《すゑ》には天下《てんか》を…………などゝ云《い》ふ大気焔《だいきえん》も有つたのです、
処《ところ》へ或日《あるひ》石橋《いしばし》が来て、唯《たゞ》恁《かう》して居《ゐ》るのも充《つま》らんから、練習の為《ため》に雑誌を拵《こしら》へては奈何《どう》かと云《い》ふのです、いづれも下地《したぢ》は好《すき》なりで同意《どうい》をした、就《つい》ては会員組織《くわいゝんそしき》にして同志《どうし》の文章を募《つの》らうと議決《ぎけつ》して、三人《さんにん》が各自《てんで》に手分《てわけ》をして、会員《くわいゝん》を募集《ぼしう》する事に成《な》つた、学校に居《を》る者、並《ならび》に其以外《それいぐわい》の者をも語合《かたら》つて、惣勢《そうぜい》二十五|人《にん》も得《え》ましたらうか、其内《そのうち》過半《くわはん》は予備門《よびもん》の学生でした、
今日《こんにち》になつて見ると、右の会員の変遷《へんせん》は驚《おどろ》く可《べ》き者《もの》で、其内《そのうち》死亡《しばう》した者《もの》、行方不明《ゆくへふめい》の者《もの》、音信不通《いんしんふつう》の者《もの》等《など》が有るが、知れて居《ゐ》る分《ぶん》では、諸機械《しよきかい》の輸入《ゆにふ》の商会《しやうくわい》に居《ゐ》る者《もの》が一人《ひとり》、地方《ちはう》の判事《はんじ》が一人《ひとり》、法学士《はふがくし》が一人《ひとり》、工学士《こうがくし》が二人《ふたり》、地方《ちはう》の病院長《びやうゐんちやう》が一人《ひとり》、生命保険《せいめいほけん》会社員《くわいしやいん》が一人《ひとり》、日本鉄道《にほんてつだう》の駅長《えきちやう》が一人《ひとり》、商館番頭《しやうくわんばんたう》が築地《つきぢ》(諸機械《しよきかい》)と横浜《よこはま》(生糸《きいと》)とで二人《ふたり》、漁業者《ぎよげふしや》と建築家《けんちくか》とで阿米利加《あめりか》に居《を》る者《もの》が二人《ふたり》、地方《ちはう》の中学教員《ちうがくけういん》が一人《ひとり》、某省《ぼうせう》の属官《ぞくくわん》が二人《ふたり》、大阪《おほさか》と横浜《よこはま》とで銀行員《ぎんかういん》が二人《ふたり》、三州《さんしう》の在《ざい》に隠《かく》れて樹《き》を種《う》ゑて居《ゐ》るのが一人《ひとり》、石炭《せきたん》の売込屋《うりこみや》が一人《ひとり》、未《ま》だ/\有るが些《ちよつ》と胸に浮《うか》ばない、先《ま》づ這麼《こんな》風《ふう》に業躰《げふてい》が違つて居《ゐ》るのです、而《さう》して、後※[#二の字点、1−2−22]《のち/\》硯友社員《けんいうしやいん》として文壇《ぶんだん》に立つた川上眉山《かはかみびさん》、巌谷小波《いはやせうは》、江見水蔭《えみすゐいん》、中村花痩《なかむらくわさう》、広津柳浪《ひろつりうらう》、渡部乙羽《わたなべおとは》、などゝ云《い》ふ面々《めん/\》は、此《こ》の創立《さうりつ》の際《さい》には尽《こと/″\》く未見《みけん》の人であつたのも亦《また》一奇《いつき》と謂《い》ふべきであります、
因《そこ》で其《そ》[#ルビの「そ」は底本では「その」]の雑誌と云《い》ふのは、半紙《はんし》両截《ふたつぎり》を廿枚《にぢうまい》か卅枚《さんぢうまい》綴合《とぢあは》せて、之《これ》を我楽多文庫《がらくたぶんこ》と名《なづ》け、右の社員中から和歌《わか》、狂歌《きやうか》、発句《ほつく》、端唄《はうた》、漢詩《かんし》、狂詩《きやうし》、漢文《かんぶん》、国文《こくぶん》、俳文《はいぶん》、戯文《げぶん》、新躰詩《しんたいし》、謎《なぞ》も有れば画探《ゑさが》しも有る、首《はじめ》の方《はう》には小説を掲《かゝ》げて、口画《くちゑ》も挿画《さしゑ》も有る、是《これ》が総《すべ》て社員の手から成《な》るので、其《そ》の筆耕《ひつこう》は山田《やまだ》と私《わたし》とで分担《ぶんたん》したのです、山田《やまだ》は細字《さいじ》を上手《じやうづ》に書きました、私《わたし》のは甚《はなは》だ醜《きたな》い、で、小説の類《るい》は余《あま》り寄稿者《きかうしや》が無かつたので、主《おも》に山田《やまだ》と石橋《いしばし》と私《わたし》とのを載《の》せたのです、此《こ》の三人《さんにん》以外《いぐわい》に丸岡九華《まるおかきうくわ》と云《い》ふ人がありました、此《この》人は小説も書けば新躰詩《しんたいし》も
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