立てて泣きぬ。
 憤《いかり》を抑《おさ》ふる貫一の呼吸は漸《やうや》く乱れたり。
「宮《みい》さん、お前は好くも僕を欺いたね」
 宮は覚えず慄《をのの》けり。
「病気と云つてここへ来たのは、富山と逢ふ為だらう」
「まあ、そればつかりは……」
「おおそればつかりは?」
「余《あんま》り邪推が過ぎるわ、余り酷《ひど》いわ。何ぼ何でも余り酷い事を」
 泣入る宮を尻目に挂《か》けて、
「お前でも酷いと云ふ事を知つてゐるのかい、宮さん。これが酷いと云つて泣く程なら、大馬鹿者にされた貫一は……貫一は……貫一は血の涙を流しても足りは為《せ》んよ。
 お前が得心せんものなら、此地《ここ》へ来るに就いて僕に一言《いちごん》も言はんと云ふ法は無からう。家を出るのが突然で、その暇が無かつたなら、後から手紙を寄来《よこ》すが可いぢやないか。出抜《だしぬ》いて家を出るばかりか、何の便《たより》も為んところを見れば、始から富山と出会ふ手筈《てはず》になつてゐたのだ。或《あるひ》は一所に来たのか知れはしない。宮さん、お前は奸婦《かんぷ》だよ。姦通《かんつう》したも同じだよ」
「そんな酷いことを、貫一さん、余《あん
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