んので、いづれ後程には是非伺ひまして、……」
「成程、それでは残念ですが、私も散歩は罷《や》めます。散歩は罷めてこれから帰ります。帰つてお待申してゐますから、後に是非お出下《いでくだ》さいよ。宜《よろし》いですか、お宮さん、それでは後にきつとお出《いで》なさいよ。誠に今日は残念でありますな」
 彼は行かんとして、更に宮の傍《そば》近く寄来《よりき》て、
「貴方《あなた》、きつと後《のち》にお出《いで》なさいよ、ええ」
 貫一は瞬《まばたき》も為《せ》で視《み》てゐたり。宮は窮して彼に会釈さへ為《し》かねつ。娘気の可羞《はづかしさ》にかくあるとのみ思へる唯継は、益《ますます》寄添ひつつ、舌怠《したたる》きまでに語《ことば》を和《やはら》げて、
「宜《よろし》いですか、来なくては可けませんよ。私待つてゐますから」
 貫一の眼《まなこ》は燃ゆるが如き色を作《な》して、宮の横顔を睨着《ねめつ》けたり。彼は懼《おそ》れて傍目《わきめ》をも転《ふ》らざりけれど、必ずさあるべきを想ひて独《ひと》り心を慄《をのの》かせしが、猶《なほ》唯継の如何《いか》なることを言出でんも知られずと思へば、とにもかくに
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