》みて、象牙《ぞうげ》の如く瑩潤《つややか》に白き杖《つゑ》を携へたるが、その尾《さき》をもて低き梢の花を打落し打落し、
「今お留守へ行きまして、此処《ここ》だといふのを聞いて追懸《おつか》けて来た訳です。熱いぢやないですか」
 宮はやうやう面《おもて》を向けて、さて淑《しとやか》に起ちて、恭《うやうやし》く礼するを、唯継は世にも嬉しげなる目して受けながら、なほ飽くまでも倨《おご》り高《たかぶ》るを忘れざりき。その張りたる腮《あぎと》と、への字に結べる薄唇《うすくちびる》と、尤異《けやけ》き金縁《きんぶち》の目鏡《めがね》とは彼が尊大の風に尠《すくな》からざる光彩を添ふるや疑《うたがひ》無し。
「おや、さやうでございましたか、それはまあ。余り好い御天気でございますから、ぶらぶらと出掛けて見ました。真《ほん》に今日《こんにち》はお熱いくらゐでございます。まあこれへお掛遊ばして」
 母は牀几を払へば、宮は路《みち》を開きて傍《かたはら》に佇《たたず》めり。
「貴方《あなた》がたもお掛けなさいましな。今朝です、東京から手紙で、急用があるから早速帰るやうに――と云ふのは、今度私が一寸した会社を
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