得心がいけば、済む事だし、又お前が彼方《あちら》へ適つて、末々まで貫一さんの力になれば、お互の仕合《しあはせ》と云ふものだから、其処《そこ》を考へれば、貫一さんだつて……、それに男と云ふものは思切《おもひきり》が好いから、お前が心配してゐるやうなものではないよ。これなり遇《あ》はずに行くなんて、それはお前|却《かへ》つて善くないから、矢張《やつぱり》逢つて、丁《ちやん》と話をして、さうして清く別れるのさ。この後とも末長く兄弟で往来《ゆきかよひ》をしなければならないのだもの。
 いづれ今日か明日《あした》には御音信《おたより》があつて、様子が解らうから、さうしたら還つて、早く支度に掛らなければ」
 宮は牀几《しようぎ》に倚《よ》りて、半《なかば》は聴き、半は思ひつつ、膝《ひざ》に散来る葩《はなびら》を拾ひては、おのれの唇に代へて連《しきり》に咬砕《かみくだ》きぬ。鶯《うぐひす》の声の絶間を流の音は咽《むせ》びて止まず。
 宮は何心無く面《おもて》を挙《あぐ》るとともに稍《やや》隔てたる木《こ》の間隠《まがくれ》に男の漫行《そぞろあるき》する姿を認めたり。彼は忽《たちま》ち眼《まなこ》を着
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