、……や、不思議だ! どうか、まあ渝《かは》らず一生かうしてお附合《つきあひ》を為たいと思ふ。けれども私は高利貸だ。世間から鬼か蛇《じや》のやうに謂《いは》れて、この上も無く擯斥《ひんせき》されてゐる高利貸だ。お前さん方もその高利貸の世話に成つてゐられるのは、余り栄《みえ》でも無く、さぞ心苦く思つてゐられるだらう、と私は察してゐる。のみならず、人の生血を搾《しぼ》つてまでも、非道な貨《かね》を殖《こしら》へるのが家業の高利貸が、縁も所因《ゆかり》も無い者に、設《たと》ひ幾らでも、それほど大事の金をおいそれと出して、又体まで引取つて世話を為ると云ふには、何か可恐《おそろし》い下心でもあつて、それもやつぱり慾徳|渾成《ずく》で恩を被《き》せるのだらうと、内心ぢやどんなにも無気味に思つてゐられる事だらう、とそれも私は察してゐる。
さあ、コップを空《あ》けて、返して下さい」
「召上りますの?」
「飲む」
酒気は稍《やや》彼の面《おもて》に上《のぼ》れり。
「お静さんはどう思ふね」
「私《わたくし》共は固《もと》より命の無いところを、貴方のお蔭ばかりで助《たすか》つてをりますので御座いますか
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