、去年の始から貴方はあれの世話に成つてをつたのですか」
「私はあんな人の世話なんぞには成りは致しません!」
「はあ? さうですか。世話に成つてゐたのぢやないのですか」
「いいえ、貴方。唯お座敷で始終呼れますばかりで」
「ああ、さうですか! それぢや旦那《だんな》に取つてをつたと云ふ訳ぢやないのですか」
女は聞くも穢《けがらは》しと、さすが謂ふには謂れぬ尻目遣《しりめづかひ》して、
「私には、さう云ふ事が出来ませんので、今までついにお客なんぞを取つた事は、全然《まるつきり》無いんで御座います」
「ああ、さうですか! うむ、成程……成程な……解りました、好く解りました」
狭山は俯《うつむ》きゐたり。
「それではかう云ふのですな、貴方は勤《つとめ》を為てをつても、外の客には出ずに、この人|一個《ひとり》を守つて――さうですね」
「さやうです」
「さうして、余所《よそ》の身請を辞《ことわ》つて――富山唯継を振つたのだ! さうですな」
「はい」
※[#「※」は「倏」の「犬」の代わりに「火」、450−14]忽《たちまち》に瞳《ひとみ》を凝《こら》せる貫一は、愛子の面《おもて》を熟視して止《や
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