目+旬」、393−2]《みまは》せど、はや宮の影は在らず。その歩々《ほほ》に委《おと》せし血は苧環《をだまき》の糸を曳きたるやうに長く連《つらな》りて、畳より縁に、縁より庭に、庭より外に何処《いづこ》まで、彼は重傷《いたで》を負ひて行くならん。
磐石《ばんじやく》を曳くより苦く貫一は膝の疼痛《いたみ》を怺《こら》へ怺へて、とにもかくにも塀外《へいそと》に※[#「※」は「足+禹」、393−5]《よろぼ》ひ出づれば、宮は未《いま》だ遠くも行かず、有明《ありあけ》の月冷《つきひやや》かに夜は水の若《ごと》く白《しら》みて、ほのぼのと狭霧罩《さぎりこ》めたる大路の寂《せき》として物の影無き辺《あたり》を、唯|独《ひと》り覚束無《おぼつかな》げに走れるなり。
「宮! 待て!」
呼べば谺《こだま》は返せども、雲は幽《ゆう》にして彼は応《こた》へず。歯咬《はがみ》を作《な》して貫一は後を追ひぬ。
固《もと》より間《あはひ》は幾許《いくばく》も有らざるに、急所の血を出《いだ》せる女の足取、引捉《ひつとら》ふるに何程の事有らんと、侮《あなど》りしに相違して、彼は始の如く走るに引易《ひきか》へ、此方
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