待て待て! ともかくもこの手を放せ」
「いいえ、止めずに」
「待てと言ふに」
「早く死にたい!」
漸《やうや》く刀を※[#「※」は「てへん+宛」、392−11]放《もぎはな》せば、宮は忽《たちま》ち身を回《かへ》して、輾《こ》けつ転《ころ》びつ座敷の外に脱《のが》れ出づるを、
「宮、何処《どこ》へ行く!」
遣《や》らじと伸《の》べし腕《かひな》は逮《およ》ばず、苛《いら》つて起ちし貫一は唯|一掴《ひとつかみ》と躍り被《かか》れば、生憎《あやにく》満枝が死骸《しがい》に躓《つまづ》き、一間ばかり投げられたる其処《そこ》の敷居に膝頭《ひざがしら》を砕けんばかり強く打れて、※[#「※」は「足+(殕−歹)」、392−14]《のめ》りしままに起きも得ず、身を竦《すく》めて呻《うめ》きながらも、
「宮、待て! 言ふことが有るから待て! 豊、豊! 豊は居ないか。早く追掛けて宮を留めろ!」
呼べど号《さけ》べど、宮は返らず、老婢は居らず、貫一は阿修羅《あしゆら》の如く憤《いか》りて起ちしが、又|仆《たふ》れぬ。仆れしを漸く起回《おきかへ》りて、忙々《いそがはし》く四下《あたり》を※[#「※」は「
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