て直《ただ》ちに蛇蝎《だかつ》に親まんや、と却《かへ》りてその執念をば難堪《たへがた》く浅ましと思へるなり。
 されど又情として※[#「※」は「がんだれ+萬」、382−9]《はげし》く言ふを得ざるこの場の仕儀なり。貫一は打悩《うちなや》める眉《まゆ》を強《しひ》て披《ひら》かせつつ、
「さうして貴方が満足するやうな一言《いちごん》?……どう云ふ事を言つたら可いのですか」
「貴方もまあ何を有仰《おつしや》つてゐらつしやるのでせう。御自分の有仰る事を他《ひと》にお聞き遊ばしたつて、誰が存じてをりますものですか」
「それはさうですけれど、私にも解らんから」
「解るも解らんも無いでは御座いませんか。それが貴方は何か巧い遁口上《にげこうじよう》を有仰《おつしや》らうとなさるから、急に御考も無いので、貴方に対する私、その私が満足致すやうな一言と申したら、間さん、外には有りは致しませんわ」
「いや、それなら解つてゐます……」
「解つてゐらつしやるなら些《ちよつ》と有仰《おつしや》つて下さいましな」
「それは解つてゐますけれど、貴方の言れるのはかうでせう。段々お話の有つたやうな訳であるから、とにかくそ
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